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働くママのための産後ケアトラブル&対処法妊娠・出産について

取材:2016年7月

著者インタビュー画像 産褥期(さんじょくき)と呼ばれる産後1〜2カ月はとにかく養生に専念すべき時期。特に、出産で緩んだ骨盤をしっかり締めることが、出血を減らし骨盤を正しい位置に戻すのに効果的。産褥期以降には、肩こり、腰痛、尿漏れ、痔などのトラブルが起こりやすい状態が続きます。そこで今回は、ダメージを受けた産後のカラダをいたわり、回復を後押しするセルフケアの方法やトラブルの対処法を産科医の善方先生に伺いました。
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産褥気に無理は禁物!

著者インタビュー画像1 子宮が元の大きさに戻るまでの産後約2カ月を「産褥期(さんじょくき)」といいます。ワーママは頑張り屋さんが多いので、退院したら、つい家事や上の子のお世話をしてしまいがち。でも産褥期は決して頑張りすぎず、最低でも1カ月は床上げせず、横になって過ごしましょう。
この時期のトラブルとして最近増えているのは「不明熱」と「全身の発疹」。はっきりした原因はわかっていませんが、慣れない授乳や赤ちゃんのお世話に加えて、産後すぐに家事などを頑張ってしまうと、ママのからだはオーバーヒートを起こしてしまうのかもしれません。滋養強壮効果があり、産後の肥立ちを助けるような漢方薬を服用することや、からだをしっかり休めることで徐々に落ち着いてくることが多いです。
また乳腺炎や子宮内感染による高熱が起こることもあります。この時期の無理は絶対に禁物。ママは授乳以外のことを周囲にサポートしてもらえる環境を妊娠中から整えておくといいですね。

産後の腰痛・尿漏れ・体型崩れの原因になる骨盤のゆがみを予防

「産後おなかが引っ込むかしら…」「妊娠前の体に戻れるかな…」と心配する人も多いと思います。実際10カ月かけて変化したからだは急には戻らず、だいたい半年かけて戻っていきます。
1番大きな変化は骨盤の緩み。妊娠後期には赤ちゃんが大きくなるのに合わせて、骨盤も筋肉も緩んで開いていきます。出産時は骨盤底筋群が柔らかく変化し、引き伸ばされ、産後はしばらく緩んだ状態が続くため、尿道、膣、肛門も閉まりにくくなります。私が副院長を務める産院では、産後すぐにさらしや骨盤ベルトなどで開いた骨盤の下部を締めるケアをおこなっています。
また大きくなった子宮は2カ月かけて収縮しながら元に戻ります。胎盤と子宮の内壁はたくさんの血管でつながっていたところなので、胎盤が剥がれたあとは出血しやすくなっており、子宮がギュッと縮んだとき痛みを感じ、フワッと緩んだときは血管が開いて出血します。子宮の収縮によって起こる痛みを「後陣痛(こうじんつう)」といい、出血を「悪露(おろ)」といいます。産後すぐから骨盤を閉めることで、1カ月ほど続く悪露の量を減らす効果も期待できます。
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<骨盤の位置の変化>
正常な骨盤は下部が狭まっているが、産後は恥骨結合が緩んで裾広がり(ずん胴型)の骨盤になってしまうことが多い

「ケーゲル体操」で始める産後の骨盤底筋ケア

骨盤や骨盤底筋群の開きは、腰痛、尿漏れ、便漏れ、痔、体型崩れなど、さまざまなトラブルの原因になりますので、十分なケアが必要です。骨盤を締めるのと同時におすすめしているのは、産後すぐから寝たままで行える「ケーゲル体操」です。尿失禁に悩む女性患者のケアを目的としてアメリカで開発された体操で、膣や肛門の中を締め上げて上に持ち上げ、緩んだ骨盤底筋群を鍛えるものです。
ケーゲル体操を続けていても、腰痛がひどかったり骨盤のずれなどを感じたりすることもあります。筋肉と骨盤は3〜6カ月かけてゆっくり戻っていくので、産後1カ月からは骨盤底筋の積極的な筋トレがおすすめ。当院では骨盤ケアに効果的な産後ヨガ講座などを開催していますが、地元自治体などに問い合わせると、ぴったりの講座を紹介してもらえることもありますよ。

<ケーゲル体操>
  • 1. あお向けで、両ひざを立て、ひざを少し開きます。
  • 2. 両手は手のひらを下にして、体の横に置きます。
  • 3. 腰を少し上げてから、息を吸いながら肛門や膣をきゅっと締め、上に持ち上げるようなイメージで骨盤底筋を引き締めます。ゆっくり息を吐きながら10秒間キープ。その後ゆっくり腰を下ろします。
 
この体操は産後1〜2日目から布団の中でもできます。床上げ後は座った姿勢や立った姿勢で行うこともできますので、ぜひ続けましょう。一番簡単なのは、つま先立ちで弱く息を吐きながら、肛門と膣を締め上げる方法。一見遠回りに思えるかもしれませんが、毎日続けることが大切。小尻効果もありますので、最終的にはボディメイクの近道となりますよ。
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<ケーゲル体操>
ケーゲル体操を仰向けに寝て行う時は、息を吸いながら肛門をキュッと締め、骨盤底の筋肉を引き締める

産後のトラブルと対処法

著者インタビュー画像4 産後はほかにもいろいろな不調やからだの異変が起こります。「おかしいな」と感じたらこまめにケアしましょう。ここでは主なトラブルと、その原因・対処法を紹介します。

  • ●髪がごっそり抜ける/ホルモンの影響で起こる一時的な現象/半年もすれば毛量は元に戻るので、食事ではミネラルや鉄分を多く摂取
  • ●疲れやすい/授乳などによる体力の消耗/食事ではたんぱく質を多く摂取/家事はパートナーに手伝ってもらう
  • ●便秘/授乳で水分をおっぱいにとられる/十分な水分補給
  • ●頭痛、肩こり/前かがみ、猫背での授乳/肩を開き、首を伸ばした状態で授乳
  • ●腱鞘炎/子どもを抱き上げるとき、手首だけで持ち上げるため/赤ちゃんを密着させた上手な抱っこの方法
  • ●腰痛/片足でベッドから降りるなどの何気ない動作で骨盤がゆがみ、ゆがむほど腰痛が悪化/必ず両足で立ち上がる、おむつ替えや抱き上げるときの中腰は避ける/必ず腰を落として上半身全体の力で抱き上げる
  • ●尿漏れ・痔/骨盤底筋の緩み、冷え/ケーゲル体操などの骨盤底筋群トレーニング


このほかにも、最近では、J-STARTという論文で産後の乳がんが増えているとの発表がありました。乳がん検診は授乳中でも超音波とマンモグラフィーで行うことができますので、ぜひやっていただきたいです。
また、これまでは出産すると骨密度が増えると言われてきましたが、思春期の無理なダイエットなどでもともと骨密度が低い人の場合、むしろ骨粗しょう症のリスクが高まる恐れがあります。私たちの行った研究から、やせ型で色白のビタミンD不足の方は骨密度が低い可能性が高いので、一度検診でご自分の骨密度を知っておくことが大切です。

産後うつの傾向が出たらリラックスが肝心

著者インタビュー画像5 深刻な「産後うつ」になる人はごく一部ですが、「なんとなくつらい」「赤ちゃんはかわいいけど一緒にいたくない」「お世話をしたいのにからだが動かない」などと感じる人は私の患者さんにも結構いらっしゃいます。原因は人それぞれですが、産後急激に女性ホルモンが減少することや、核家族化によって「孤育て」になっていることも一因。もともと人間は集団で子育てをする種族なので、一人で赤ちゃんと向き合うと不安になるのは当然なこと。思いを抱え込まず、誰かに打ち明けるだけでもラクになりますよ。
また出産の高齢化が進み、社会経験豊富なママが増えたことで、育児を「仕事」のように考えてしまう人が増えていると感じます。タスク化すると、絶対その通りにはできないので苦しくなります。間違うことや、つまずくことは当たり前。頭を使うのをやめて、五感を鍛え、「赤ちゃんっていい匂い」「ふわふわの肌が気持ちいい」など動物的な本能も大切に、赤ちゃんとの時間を楽しんで過ごすことを心がけてみてくださいね。

働くママだからこそのメリハリ育児を楽しんで

私自身3人の娘を育てた経験や、たくさんの出産に立ち会った経験から、命の誕生やそれに伴う女性のからだの変化は、本当に神秘的で巧妙だと実感しています。
たとえば、授乳は大変に思えるかもしれませんが、やれば意外とできてしまうし、授乳中はなんだか幸せな気持ちになったりも。実はそれは「オキシトシンホルモン」の働きによるもの。日中に赤ちゃんと離れていると、まるで遠距離恋愛のように赤ちゃんへの恋しさが募ります。だからこそ仕事が終わった後、赤ちゃんとの授乳タイムを持てると、別名「共感愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンホルモンのおかげで、赤ちゃんとの蜜月のようなうっとりした時間を共有できるのです。
ある調査によると、ワーママは仕事をしていないママより、子育てを楽しいと思っており、たくさん出産する傾向にあるそうです。「離れているときにわが子を想うこと」と、「仕事で自分が一個人であることを実感すること」がもたらすメリハリ育児は親子共々、精神衛生面で大変良い環境を作ることができます。
子育て中は、子どもがいないときと比べて仕事にかけるパワーが少なくなるのは仕方がないこと。そこは割り切って、今しかできない赤ちゃんとの時間を人生の素晴らしいひとときと実感しながら楽しみましょう。「頑張り過ぎず、楽しみながら」ワーママ期を素敵に幸せに過ごしてくださいね。

※記事内容およびプロフィールは取材当時のものです。

著者プロフィール

産科医

善方 裕美

1993年高知医科大学卒業。横浜市立大学付属病院産婦人科を経て98年より現職。『産前・産後のボディケア』(2008年・ベネッセコーポレーション刊)の監修のほか、母乳育児・産後のケアを中心に、雑誌や書籍の監修を多数務める。3女の母。

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