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親子の時間は「質」が大切のびのびとした子に育てるヒント集子ども・家族について

取材:2016年1月

著者インタビュー画像 子どもには、心身ともに健やかで、自分らしく伸びやかに育ってほしいと親なら誰しも思うもの。ここでは、幼稚園教諭を経てこれまで6000人の子どもたちに出逢い、発達心理学の観点から親子の関係について研究を重ねてきたチャイルド・ファミリーコンサルタントの山本直美さんに、よりよい子育てのポイントを伺いました。仕事をしていると、子どもと向き合う時間が少ないことに不安を感じるかもしれませんが、大切なのは、時間の長さではなく「質」なのだそうです。
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6000人の子どもたちと接してわかった幼児期の重要性

著者インタビュー画像 私は幼稚園教諭を経て6000人以上の子どもたちと接し、幼児期から青年期までの成長を見つめてきました。その経験から見えてきたのが、青年期のつまずきの原因が幼児期の子育てにあり、家庭や夫婦の関係にもあるということ。これまでもなんとなく「そうかな」と言われてきたことですが、やはり幼児期が一番大切なのです。これまでの実務経験と発達心理学のメカニズムを組み合わせ、よりよい子育てのポイントとはなにかが見えてきたのです。

大切なのは言葉と体験をつなげていくこと

著者インタビュー画像2 幼児期の教育というと、多いのが英語教育やパズルを解くなどの「知育」に偏ったもの。また、幼児への絵本の読み聞かせも重視されていますね。どちらも否定するものではありませんが、それよりもさらに大切だとお伝えしているのは「ことばの力」を身につけさせること。別の言い方をすると、一つの言葉から立体的に意味を読み取る力とでも言うのでしょうか。
たとえば、私が作った幼児向けの絵本『ぐるぐる』では、車のタイヤやロールパンといった“ぐるぐる”がたくさん登場します。「ぐるぐるって、たくさんあるね!」と絵本を見ながら会話するだけでなく、実際に車を見に行ったり、ロールパンをおやつに出したりして、言葉と体験をつなげていく。こうすると子どもたちの脳の中に「ぐるぐる」という言葉に対する豊かな概念と体験が取り込まれていくのです。
こうして言葉を自分のものにできた子どもは、勉強を始める年齢になってもつまずきにくく、人とのコミュニケーションも豊かにとることができます。なぜならば、すべての学習の基礎にあるのが、問題を読み解き、的確に理解する「読解」の力だからです。

「ことば」を整えると、「こころ」も整う

「ことば」には、人の心を変える力もあります。たとえば、子どもの姿勢が悪いときについ「○ちゃん、姿勢が悪いわよ」と注意すること、ありませんか?? 実はこれ、逆効果なんです。幼児期の脳は実に素直なので、「ボクって姿勢の悪い子なのか!」と受け止める原因になってしまうのです。すると、どんどんそのラベルに自分を合わせてしまうのです。つまり、本当に姿勢が悪くなってしまいがちなのです。実際、みなさんも子どもの頃、「あなたって算数がニガテね!」なんて言われて、本当に算数がキライになった経験はありませんか。それと似たようなことなのです。
では、どうすればいいか。これが不思議なようですが、姿勢のいいときに「○ちゃんは、いい姿勢でご飯を食べることができるよね」と認めてあげればよいのです。子どもの自己イメージが「姿勢のいい子」に変わり、そんな自分が誇らしくて、ますます「姿勢のいい子」へと育っていきますよ。

「ことば」はパートナーとの関係においても大切

著者インタビュー画像3 「ことば」の持つ魔法のような力は、パートナーとの関係性にもあてはめることができます。幼い子どもにとって親がケンカをしたり、不仲であることは大きなストレスの原因になりやすいと言われています。
けれど、両立を頑張るワーキングマザーであれば、パートナーに対して「どうしてやってくれないの?」「言ってもできないんでしょ!」と当たってしまうこともあるでしょう。女性が抱え込みすぎず、パートナーをうまく子育てに巻き込んでいくためにも、ぜひ「ことば」を上手に使ってほしいですね。たとえば、パートナーの行動を変えてほしいときには、「○○してほしいの」とか、「こんなふうに言ってくれると嬉しい」などと具体的に表現するとよいですよ。
女性がこれを読むと、「そんなに単純?」と思うかもしれませんが、男性は案外、素直な脳の持ち主が多いもの(笑)。姉妹がいる方は別として、ほとんどの男性が女性の扱いをわからない。だからここは「ことば」の力を借りて、自分の取扱説明書を差し出すように、やさしく「してほしいこと」を伝える方が、パートナーとの関係がうまくいきやすいですよ。

「ほめる」のではなく「認めてあげる」

「ほめて伸ばす」のは、良い育て方だと思っている方、きっと多いでしょう。ところが、子育てでは「ほめすぎる」ことは危険です。意外かもしれませんが、ほめる子育てがつくるのは「ほめられないと不安な子ども」です。「算数、苦手だけどがんばってみる!」といった挑戦する心ややりきる力を持ちにくい子どもになりやすいのです。
ですから、子どもを伸ばすには、やったことを認めてあげるコミュニケーションがいいのです。たとえば、子どもがオレンジ色のクレヨンでぐちゃぐちゃな顔を描いたら、「上手ね!」とほめそやすのではなく「オレンジのクレヨンでお顔、描けたのね」と声をかけてあげる。お手伝いをがんばってくれたら、「お手伝いしてくれて、嬉しいな」と行動や感情を認めてあげる。それだけで、子どもは「ママはちゃんとわかってくれてる!」「ボク、認められたんだ!」と嬉しくなり、やがて誇りや自信が育っていくのです。

子どもに必要な7つのパイプ

子どもに必要な7つのパイプ 子どもの周囲に、たくさんの「好きなひと」がいることも、「心の安定」した子どもの成長には大切です。心が安定していて自分に自信を持てている子どもたちに、「好きなひとを教えて」と聞くと、実にたくさんの人の名前をあげてくれます。「パパ、ママ、おじいちゃん、おばあちゃん、犬の散歩で会うおばちゃん、マンションの管理人さん、友達の○くん、○ちゃん!」という具合に。子どもの周囲に豊かな人間関係ができていることがわかりますよね。
こうした充実した人間関係は、子どものコミュニケーション能力や人間性を高めるだけでなく、「何かあったときの逃げ場」が豊富にあるということの表れです。学校でちょっとしたトラブルがあっても「ママはわかってくれないけど、管理人さんはわかってくれるかな?」と思うことができたり、思春期の悩みも「家族には言いにくいけど、あの人なら…」となる。こうしたことを7つのパイプと呼びます。
実際、青年期のつまずきが原因で凶悪事件を起こした人の共通項に、周囲に全くと言っていいほど人間関係がなかった「孤立」があるといわれています。ですから、周囲を巻き込んで子どもたちにたくさんの「好きなひと」をつくっていくことはとても大切なのです。

「心の安定」「自律」「快動」が自分らしさの基礎に

たくさんの人間関係を築くことと同様に、子どもの人格形成の基盤になるのが、「心の安定」「自律」「快動」の3つです。「快動」という言葉は私の造語で、大好きなことを何度も繰り返してやりたがるようなことをイメージしています。たとえば、時間があれば絵を描いたり、ブロックで何かを作っては壊したり。心が安定していて、幼いなりに自分を律することができて、大好きなことがあること。この3つがしっかり整うことが、自分らしさの基礎となります。そこから、自尊心や自発性が育まれ、生き生きとした人生を送る上で、大切な力が伸びていくのです。親としては、子どもの成長にこうした3つの要件が必要であることを把握しておくことも大切なことかもしれません。

忙しいワーキングマザーにとっても「快動」は大切

著者インタビュー画像4 この「快動」は、大人になってもなくてはならない大事なものです。幼い子どもを育てながら仕事もしていると、時間も余裕もない。24時間365日が、“やるべきこと”に埋め尽くされて息がつまりそう。でもそんなときこそ、この「快動」が大切なのです! 自分が煮詰まってしまいそうなサインを感じたら、ちゃんと大好きなことをする時間をとりましょう。本を読むのが好きなら、本を読んだり。映画でも、買い物でも。ちょっと勇気を持って、毎日のどこかにちゃんと「快動」の時間をつくることができれば、心も健やかになり、結果、子どもやパートナーとのコミュニケーションもよくなり、いいスパイラルが生まれてくるのです。

一緒にいられる時間を「濃密」にするために

多くのワーキングマザーは、子どもと過ごす時間が少ないことを不安に思うようです。そのため「せめて休みの日はどこかに連れていってあげよう」と、休日のたびにテーマパークやショッピングセンターへ出かけるなど、イベントを詰め込んでしまいがちです。しかし、幼い子どもにとっては、人混みやあまり見慣れない新しい場所は、刺激が多すぎて大きなストレスの要因にもなります。そこで大切にしていただきたいのが「どこに一緒に行ったのか」ではなく「なにを一緒にしたのか」ということ。
子どもが幼いうちは、ゆっくりと家庭で過ごすことが、何よりしあわせな時間になります。またどこかにおでかけするときには、なるべく一つのテーマに絞って意味を深めていくことも大事だと思います。たとえば、月のはじめの週末に動物園に行ったとしたら、ほかの週末では、お家で一緒に動物が出てくる絵本を読んだり、好きな動物をお絵かきしたり、その動物のお話を作っても素敵かもしれません。ゆっくりと向き合って遊んだり、話したり。そんな何気ないことが、子どもにとって豊かな時間になるのです。

親も子どもと一緒に育っていく気持ちで!

著者インタビュー画像5 ここまでの内容について、「大変そうだな…」「私にできるかしら…」と思う方もいるかもしれませんね。子どもを産んだからといって、誰もが急にパーフェクトな親にはなれません。それは当たり前のことだと思うのです。
かつて、幼稚園教諭をしていた頃、「爪を切ってあげてくださいね」とお願いしても、切ってきてくれない保護者がいました。お弁当に、意外なものを入れてくる保護者もいます。こうしたことを「常識がない」と切り捨てるのは簡単ですが、私はそうは思いません。人というのは、されてきたことしかできないもの。子どもの頃、親のひざに抱っこされて爪を切ってもらった人もいれば、そういう経験のない人もいる。誰もが「親」とはどういうものかを学ぶ機会なく親になる。
「子育て学」という考え方をつくりましたが、親自身も子育てを通して自分を育て直していくもの。むしろ、そう考えると気持ちが楽になりませんか? 子どもを育てながら、自分も人として学び成長し、楽しみながら共に生きる。それが、子どもと向き合うこと、育てていくことなのだと思います。

※記事内容およびプロフィールは取材当時のものです。

著者プロフィール

チャイルド・ファミリーコンサルタント

山本直美

株式会社アイ・エス・シー(Infinite Stage for Children)代表。
6000人の子どもたちを見てきた経験を生かした子育て学により、保育者・親に対する人材育成に取り組む。発達予防学による「幼児期からのアイデンティティ教育」の実践のため、各地で子育て学関連の講演を継続しているほか、保育者・親子向けに様々な講座・教室も実施。
著書に『デキるパパは子どもを伸ばす―今すぐ取り組める13のステップ』(東京書籍)、『子どものココロとアタマを育む 毎日7分、絵本レッスン』(日東書院本社)、『CFCメソッド 自走できる部下の育て方』(学研)など。

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