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妊娠中から考えておくべき復帰後のキャリアについて働くことについて

取材:2015年12月

著者インタビュー画像 女性が子育てをしながら生き生きと働ける社会を目指すには、女性だけでなく企業やパートナーにも変化が求められます。時間制約のある中で働く上では前向きなキャリア観が大切ですし、女性だけが負担を背負わないためには周囲の理解とサポートが不可欠です。育休後コンサルタントとして活躍する山口理栄さんに、復帰後の働き方について考えておくべきことをアドバイスしていただきました。
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女性だけが育児・家事・仕事すべてを背負わない社会へ

女性の活躍推進が注目されていますが、育児・家事・仕事をすべてやらなければならないというプレッシャーを感じている方も少なくありません。すべてがんばってしまう真面目な女性は、その分ストレスも抱えているでしょう。子育てをしながら働く女性が、もっと生き生きと自分らしく働ける社会にするために、女性にも、企業にも、パートナーにも変化が求められます。

企業やパートナーに求められる意識改革とは

著者インタビュー画像 現在、多くの日本企業が抱えている課題の一つが長時間労働です。いまだに「仕事は終わるまでやるのが、美学だ」という考え方が根強く、パートナーは長時間労働で不在がち。そんなパートナーは家事や育児のあてにならない、と女性側があきらめているケースがありますよね。でも今、多くの企業がこうした現状を問題視するようになってきました。
これは、女性側の職場が、男性側の職場も負うべき負担まで背負いこむことになりかねない、と捉えられるようになってきたため。女性活用に積極的な会社がいくら制度を充実させたとしても、パートナーの職場が依然として男性の育児参加に理解が足りないとしたら、女性の働きやすさは向上しにくいものです。
育休後コンサルタントの活動の一つに、こうした問題に着目した大手企業などが育休中の女性社員向けに行う研修があります。週末に保育つきで開催し、パートナーにも参加してもらうのですが、男性側の意識改革、特に家事育児への参加を促すための内容も盛り込んで、効果を上げています。企業側のこうした意識改革の取り組みや男性も育児参加しやすい環境整備など、少しずつ変化は始まっています。

保育園のお迎えこそパートナーと交代で

たとえば、家庭でぜひ工夫して欲しいのが役割分担です。よくあるのが、子どもの保育園送りは夫で、迎えは妻というパターン。でも私は声を大にして「お迎えこそ交代制で!」と言いたいのです(笑)。迎えの比重を妻側に寄せてしまうと、つねに仕事が落ち着いてできない環境になりがちです。子どもが熱を出したときの保育園からの急な呼び出し対応も含め、ぜひお互いの仕事の状況を共有し合って「お迎え」の負担を分け合えたら。そのためにパートナーと話し合うのも大切なことだと思いますよ。

時短勤務でも働く意欲をもつことが大前提

著者インタビュー画像3 一方で、産休や育休、短時間勤務といった両立支援制度がなぜあるのかをきちんと理解していない女性がいることも問題だと思います。福利厚生制度と混同されてしまいがちですが、本来は仕事と子育てを両立するための制度です。これは余暇のために使うものではありません。私が知っているケースに、育児のために1日4時間勤務にしていた女性が、勤務後に退社して保育園にお迎えにいくのではなく習い事に通っていたというものがありました。一緒に働く周囲のメンバーがそれを知り、職場との関係がうまくいかなくなることも。厳しいようですが、時短で働くことはやはり周囲に負荷をかけることでもあります。ですから、「あの人は何をやっているんだろう?」とならないように。制約のある中で働くので、パフォーマンスの一時的な低下もあるとは思いますが、仕事に対しては真剣に向き合う姿勢が大切だと思います。

自分がどこまで働きたいのかをしっかり伝えて

復帰直後の仕事の任され方について、不満を感じる女性は少なくないようです。たとえば、自分の実績や能力からして、あきらかに軽い仕事を任された場合は、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいと思います。実は上司がワーキングマザーに対して、「仕事より子どもが第一優先だろう」と思い込み、あえて調整している場合も。もし自分が「会社にいる時間帯は精一杯がんばりたい!」と思っているのなら、産休前、育休後にかかわらず、その気持ちはしっかり上司に伝えることが大切です。意欲や想いをストレートに伝える努力をすれば、自分の能力や意欲に応じた仕事を任されるようになると思います。そのためにも、子どもをもつ前から自分のキャリア観を確立するのがベストですね。

なぜ働く必要があるのか。働く覚悟はもっておきたい

著者インタビュー画像4 こうした話をすると、どうしても「そこまでしなくても」「夫に迎えを頼むなんて、そんな」と思う方もいるかもしれません。けれど、女性が働き続けることやキャリアを積むことは、自己実現をしたい人だけの問題ではないのです。今、日本では3組に1組が離婚する時代です。また、この経済状況を考えると必ずしもパートナーの会社が永遠に安泰とは限りません。未来に何かあったときに、自分と子どもの生活は守れるのか、この発想はどんな母親にも必要なことです。また、1年に1度は家族旅行を楽しめる、子どもに十分な教育を与え、子どもの可能性や選択肢を広げられる、といった点でも女性がキャリアを高めていくことは、家族そのものにとってもとても合理性のあること。自分は働く必要がある、と覚悟が決まっていると気持ちがぶれないですよ。

「どんなキャリアを築きたいのか」が描けないときには

働き続けていく理由はわかったけれど、大切な子どもを預けてまで働くだけの“やりがい”が見えなくなってしまった、という方もいるかもしれません。「ここを目指したい」「これをやりたい」という目標がない、目の前のことに頭がいっぱいで自分のことを真剣に考えることができない。そんなときには、ぜひ思い出してみてください。今いる会社を選んだ理由、自分が就職したときに何をやりたかったのか、何をチャレンジしたかったのか。私がセミナーでこの話をしたところ、「そう言えば、私は中国ビジネスがやりたかったんです!」と夢を思い出して、再び目指した道を歩み始めた方もいましたね。

子どもと過ごす時間が少ない?!罪悪感にさいなまれたら

著者インタビュー画像5 多くのワーキングマザーが抱くのは、「私は、ほかの人よりも子どもと過ごす時間が少ないのでは?」という不安。あまり神経質になりすぎないのが一番ですが、子どもと過ごす時間が少ないと思うなら、代わりに保育園などとしっかり連携することをおすすめします。ノートでも保育士さんとの会話でも「家ではこうでした」「保育園ではこうでした」とやりとりすると、子どもも24時間しっかり見守られていると感じると思います。また、一緒にいる時間はすべて“子どもとの時間”と捉えてみるのもいいと思います。お迎え、買い物、と親の都合で時間を区切っていますが、子どもにとってはすべてがママと一緒の遊びの時間。帰宅途中でお歌を歌ったり、家事をこなしながらでも楽しく相手をしてあげたり。心がふれあう時間を作ることができれば、子どもも十分に満たされます。「何時間過ごせたか?」と数字ではかる問題ではないと思いますよ。

「いつか恩返しする!」という心意気で笑顔を大切に

子育て中は、周囲との徹底した情報共有も大切になります。私の知っている“達人”は、毎日退社時に明日やることを書いたメモを机に置いていきます。急に休んでしまっても、そのメモを見ればみんなが問題なく動ける工夫の一つなのです。それでも、ワーキングマザーに対して冷ややかな人も中にはいるでしょう。そういう方にこそ、きちんと感謝を伝えましょう。子どもを育てながら働くと、思うように成果が出なかったり、まわりにも迷惑をかけたりしがちですから、肩身が狭く感じてしまうかもしれません。でもこういう時には“罪悪感をもたない”ことが大切。「いまはできないけど、後でしっかり返します!」そんな気持ちで、いつも前向きに、明るい笑顔で働いてみてください。そうすればきっと、いろいろな人が応援団になってくれると思いますよ。

※記事内容およびプロフィールは取材当時のものです。

著者プロフィール

育休後コンサルタント

山口 理栄

NPO法人ファザーリング・ジャパン賛助会員、日本女性技術者フォーラム運営委員、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員、特定非営利活動法人女性と仕事研究所メンター。
総合電機メーカーで2度育休を取り、部長職まで務めた経験を持つ。2006年から2年間、社内の女性活躍推進プロジェクトのリーダーに就任。2010年に育休後コンサルタントとして独立。ダイバーシティ経営企業100選の14社を含む100以上の企業や官公庁、自治体に女性活躍推進コンサルティング、育休後職場復帰セミナー、管理職向け育休後の育成セミナー、ライフイベントを前提とした若手女性向けキャリアセミナーを提供。個人向けには2011年から育休後カフェ、育休後面会相談などのサービスを提供。多岐にわたる活動で育休後の女性の社会活躍をサポート。
主な著書に『さあ、育休後からはじめよう ~働くママへの応援歌』(労働調査会、2013年)、『子育て社員を活かすコミュニケーション【イクボスへのヒント集】』(労働調査会、2015年)

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