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お産にまつわる制度や習慣etc.日本と海外の意外な違い妊娠・出産について

取材:2016年5月

著者インタビュー画像 妊娠が分かってから、約280日間おなかの中ではぐくみ、臨月が来たら生まれる、というのは世界共通のこと。でも日本のお産では当たり前のことが、海外ではまるきり行われていなかったりと、実はさまざまなお国柄の違いがあります。JICA(独立行政法人 国際協力機構)での活動などを通じて海外の周産期医療事情にも詳しい産科医の竹内正人先生にお話を伺いました。
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妊娠中期以降、腹帯を巻くのは日本独自の習慣!?

著者インタビュー画像 日本では、妊娠5カ月を迎えると、流産しやすい時期を乗り越えたお祝いを兼ねて「帯祝い」を行う風習があります。神社に安産祈願のためにお参りをし(いわゆる戌の日参り)、この日から、腹帯を巻くわけです。昔は岩田帯という木綿の布を腰回りに巻いていましたが、現在は便利なガードルタイプのものもよく利用されています。 妊婦さんからは、「暑い季節にも腹帯を巻かなければいけませんか?」と質問を受けることがありまが、「海外の妊婦さんは腹帯は巻きませんし、腹帯は日本独自の習慣です。外しても胎児には影響はないので、ご自分が楽なほうでいいですよ」とお伝えしています。ただし妊娠後期になって、おなかが大きくなると、腹帯で支えていたほうが腰への負担が少なくて楽に過ごせるという声もありますので、試してみるのはよいと思います。

海外では母親の希望で帝王切開を行う国がある!?

著者インタビュー画像 日本では、妊婦さんが「陣痛が怖いから帝王切開にして!」と頼んでも、すぐに「はいわかりました」と帝王切開にしてくれる医療機関はありません。日本だけでなく、アメリカなど先進諸国では、帝王切開の手術が適応になるガイドラインがあるため、母体や胎児の状態が基準に当てはまらなければ行うことができないのです。
ところが海外には、妊婦さんが「痛みに耐えられない」「体型が崩れるのは嫌」はたまた「性機能が損なわれたくない」などの理由で希望しても、帝王切開を行う国が、一部にあります。
他にも、中国では吉日を誕生日としたいがゆえに、帝王切開を選ぶという話も耳にしたことがあります。ちなみに中国では帝王切開率が4割を超えています。WHOでは、本来、適正な帝王切開の割合は10~15%程度だと計算しており、それを大幅に超えた数値となっています。
ちなみに、自然分娩が原因で体型が崩れたり、性機能が損なわれたり…ということは根拠がなく、私自身が、そういう研究報告などを目にしたこともありません。また、帝王切開だから痛みとは無縁、というのは誤解です。帝王切開をした人は皆、術後の痛みと闘っていますよ。

アメリカやイギリスでは出産翌日にはもう退院!?

著者インタビュー画像 日本では出産して、4日~1週間程度の入院をします。しかし海外では入院期間が極端に短い国も少なくありません。例えば、アメリカでは、正常のお産なら出産翌日には退院する人が多いようです。医療費が高く、健康保険でもカバーしきれないのが理由だと言われています。
アメリカ以外にも、出産した翌日に退院をする国は少なくなく、イギリスのキャサリン妃が産後9時間で報道カメラの前に赤ちゃんを抱いてお披露目していた映像が話題になりましたね。イギリスはアメリカと異なり、医療費はかからないのですが、公的負担を減らすために早く退院させていることと、無痛分娩が主流で産後の回復が早い、ということが背景にあります。
また日本では、1カ月健診までは産科医が赤ちゃんも診てくれますが、アメリカの産科医は赤ちゃんを診ることになっておらず、あくまでもお産までのケアのみ。退院後の2~3日後には自分で探した小児科医まで健診のために赤ちゃんを連れていかねばなりません。日本の産院では、沐浴指導、授乳指導なども面倒をみてくれて、手厚いという考え方もできると思います。

一歩進んだ国の産後ケアとは…

著者インタビュー画像 産後は赤ちゃんのお世話が優先され、お母さんのからだのケアは後回しとなりがちです。しかし、母乳育児がうまくいかなかったり、マタニティブルーズに悩んだり、尿もれや痔など人には相談しにくい部分でのトラブルを抱えるお母さんは大変多いものです。そうしたことから日本でも近年、産後のケアの必要性が叫ばれています。 海外に目を向けてみると、フランスでは骨盤底のリハビリが、出産した全ての母親を対象に国費負担で行われています。マンションの一室などで、キネと呼ばれる理学療法士が開業しており、骨盤底のトレーニングをしてくれるのです。産後の会陰の傷の回復や、尿もれなどのトラブルの改善に役立つと考えられています。
また、韓国では「産後調理院(サヌヨリウォン)」という、産褥入院を受け入れてくれる施設があります。生後まもない赤ちゃんとお母さんが一緒に入院し、三食つきでゆっくりからだを休めることができるので、都市部を中心に人気のようです。中国でも、上海などの都市部では、「月嫂(ユエサオ)」と呼ばれる産褥ヘルパーを雇うのが高所得者層を中心にブームのようです。
日本でもこのような施設やサービスが少しずつスタートしていますが、まだ十分ではないし、費用の面でも課題があります。しかし、産後のからだも心も不安定な時期に実家のサポートが得られないお母さんは少なくありません。そういう人たちを中心に、求める声は多いと思いますので、制度や施設の整備は今後ますます望まれることでしょう。

※記事内容およびプロフィールは取材当時のものです。

著者プロフィール

産科医

竹内 正人

日本産科婦人科学会専門医。2006年より東峯婦人クリニック勤務(東京都江東区・副院長)。より優しい「生まれる」「生きる」をめざし、地域・国・医療の枠をこえて、さまざまな取り組みを展開する行動派産科医。マタニティー&ママのための鍼灸アロママッサージ院「天使のたまご」顧問。
著書・監修『はじめての妊娠&出産~おなかの中を可視化する!』『はじめてママ・パパになる!Happy妊娠・出産オールガイド』『はじめての妊娠・出産 安心マタニティブック』など。
「カムバ!」では妊娠週に応じた赤ちゃんの様子、アドバイスのページも監修。

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