カムバ!トップ読みもの母親はがんばりすぎないで!産後生活の強い味方「産後ドゥーラ」

母親はがんばりすぎないで!産後生活の強い味方「産後ドゥーラ」妊娠・出産について

取材:2016年7月

著者インタビュー画像 出産後、母親はすぐに24時間休みなしの育児に突入します。慣れない育児で、「産後うつ」や「孤育て」に悩まされる人も増えています。産後の大変な時期に、母親の心に寄り添いながら、家事・育児などをサポートしてくれる存在として、今注目を集めているのが「産後ドゥーラ」です。具体的にどんなケアをしてもらえるのか、一般社団法人ドゥーラ協会代表理事で助産師の宗祥子さんにお話を伺いました。
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母親が一番助けを必要とするのは産後3~4カ月

著者インタビュー画像 自治体が産後の母親に聞いたあるアンケートでは、「出産直後から3~4カ月までの間」に母親が最も不安や負担を感じやすいという結果が出ました。出産や授乳により母親のホルモンバランスが大きく変化するため、産後は精神的に不安定になりやすいのです。私はこの出産直後から3~4カ月までの間こそ、母親には周囲のサポートが不可欠だと思います。
まず、出産から6~8週目くらいまでの産褥期は、体がつらくて思うように動けませんよね。この時期に無理は禁物です。できるだけ家事はお休みして、ゆっくり寝て過ごしてほしいと思います。
産褥期をすぎると、少しずつ家事を始めながら、数時間置きに授乳をする生活になります。しかし、慣れない育児と家事をすべて自分でこなすのは大変。私は出産後、生活が軌道に乗るまでの期間、母親たちをサポートしたいと考え、「産後ドゥーラ」を養成する機関として2012年にドゥーラ協会を立ち上げました。

育児経験者が「産後ドゥーラ」となり母親をサポート

著者インタビュー画像 「ドゥーラ(doula)」とはギリシャ語からきた言葉で「他の女性を支援する、経験豊かな女性」という意味です。実際にアメリカやカナダ等ではドゥーラが助産師とは異なる一つの職業として確立され、たくさんのドゥーラが活躍しています。
私たちドゥーラ協会では、かつての日本に存在したような優しく母親に寄り添う地域の育児経験者やお産婆さんのような女性が必要だと考え、海外で活躍しているドゥーラという存在を、現代の日本に合うかたちで広めたいと考えたのです。海外では妊産婦を支援する「出産ドゥーラ」と産後女性を支援する「産後ドゥーラ」のふたつの役割に分かれていますが、私たちは特に産後の母親の大変さに注目し、「産後ドゥーラ」を育成しています。
現在、日本で活躍している産後ドゥーラは全国に約200人。その95%が出産・育児の経験者です。年齢層は30~60代と幅広く、まだ育児中の人もいれば、育児を終えた人もいます。「自分が出産後に大変な思いをしたから」「自分が助けてもらった恩返しがしたい」など、産後の母親に寄り添いたいという熱意を持った女性ばかり。70時間の養成講座を受けた後、それぞれが個人事業主として活動しています。

母親ケア、家事、育児、3つのサービスで支援

著者インタビュー画像 「おっぱい以外の子育ては、みんなに手伝ってもらおう」。これがドゥーラ協会のキャッチフレーズです。ここには、「おっぱい以外はすべて産後ドゥーラにお願いしていいんですよ」という思いが込められています。
産後ドゥーラのサポート内容は大きく3つあります。1つ目は「母親サポート」。母親の気持ちの変化に寄り添い、悩みを聞き、必要に応じて情報を提供したり、適切な専門機関につなげたりします。これは母親のエモーショナルな部分に重点を置いたサポートです。
2つ目が「家事サポート」。母親の負担を軽減するために、掃除、洗濯、料理などの家事をサポートします。特に食事を依頼される方が多く、産後の女性の体力回復のために和食中心の食事を作っています。
3つ目が「育児サポート」。母親がトイレに行く間に赤ちゃんを抱っこしたり、赤ちゃんが母乳をうまく吸えるようにアドバイスしたり。育児の導入期のフォローをして、母親の自立を支援します。その他、病院への通院・健診の付き添いや赤ちゃんとのお出かけの同行、上の子どもの保育園のお迎えなど、母親と相談しながらサポート内容を決めています。

長期・単発どちらもOK、必要なサービスは話し合って決定

著者インタビュー画像 産後ドゥーラは、周囲のサポート状況、ご夫婦の仕事の状況など、家庭の状況もヒアリングしながら、産後の生活をどのように送ればいいか、母親ひとりひとりと相談しながら、必要なサービスを一緒に考えていきます。 利用例としては、たとえば初産の場合、ほとんど周囲の助けが得られない母親には週に5日(2.5時間/日)のサポートを3週間、ある程度は周囲の助けがある場合は、週3日(2.5時間/日)のサポートを3週間といったケースが多いです。また、たまった家事の片付けや、料理の作り置きなど、不定期の単発依頼もあります。第二子以降の場合は、上の子のお世話を頼みたいという依頼が多くなります。
産後ドゥーラのサポート期間は産後から1年間を目安にしていますが、1年が過ぎた後でも、体調がすぐれない、子育ての相談がしたいなど、母親の状況によってサポートは継続していくことも。
母親は、認定を受けた産後ドゥーラの一覧から、親しみやすさや居住地、プロフィールなどを比較検討して依頼をすることができます。料金は平均的な相場で1時間2000円程度から。出産前、出産後、いつでも依頼は可能です。

母親の気持ちに徹底的に寄り添うことを一番大切に

著者インタビュー画像 母親の中には、他人にサポートしてもらうことに抵抗を感じる方もいるかもしれません。でも、私は他人だからこそできるサービスもあると感じています。特に母親の精神面のケアは、産後ドゥーラの強み。身内ではない第三者だからこそ話せる悩みもありますよね。
私は産後ドゥーラを育成する上で、「母親の気持ちに寄り添うこと」を最も大切にしています。たとえば、養成中のドゥーラに「母親がホールケーキを丸ごと食べたい、とリクエストしてきた場合、どう対応しますか?」という問いを出題します。ケーキを丸ごと食べれば、おっぱいは痛くなり、赤ちゃんはそのおっぱいを嫌がり…望ましくないですよね。
正解は1つではありませんが、私からは「どうしてもケーキを食べたくなる時もあるので、買ってきてあげる。そして同時に、美味しいおむすびを手作りしておいてあげませんか」とアドバイスします。ケーキを食べたいと言っていた母親も、おむすびを一口食べたら、ケーキよりもおむすびのほうがいいと思うかもしれませんよね。言葉でただ「ケーキはやめておきましょう」と言うのではなく、行動で表す。これが本当の意味で「母親の気持ちに寄り添う」ことだと思っています。

母親は遠慮なく「助けて」と言っていいのです

私は3人の子どもを育てながら、これまで多くの出産・育児に立ち会ってきました。そうした経験から改めて、赤ちゃんを授かることはこの上なく幸せなことであり、子育てはすごく楽しいことだと思っています。でも、今はさまざまな事情や環境により、子育てが当事者だけの肩にのしかかる大変苦しいものになっている場合があるようです。それは非常に残念なことだと感じています。
私が母親たちに一番伝えたいのは、「ひとりで頑張りすぎないで」ということ。しんどい時は、手を抜いてもいい。母乳で育児することが望ましいのですが、本当にしんどい時は、無理せずミルクをあげてもいいのです。食事を作る元気がないときは、コンビニで買ってもいい。ただ、その時はちょっとだけ気を遣って、化学調味料を使った食材を避け、母乳が出やすくなるために体に優しいお米が主食のお弁当にするなど工夫をすれば大丈夫。 そして、苦しいときはみずから「助けて」と言える力をぜひ身に付けてください。家族、友達、地域の人、そしてドゥーラのようなサポートサービス、まわりを見渡せば助けてくれる人はたくさんいます。子育てを経験した女性がドゥーラになってサポートを展開していますが、そうではなくても、育児が落ち着いたら、今度はぜひその時大変な思いをしているまわりの母親たちを助けてあげてほしいと思います。そうやって社会は循環していくのだと私は常々感じています。

※記事内容およびプロフィールは取材当時のものです。

著者プロフィール

一般社団法人ドゥーラ協会 代表理事

松が丘助産院 院長

宗 祥子

第一子出産後から助産師を目指し、第二子、第三子の出産を経て東京医科歯科大学保健衛生学科及び、母子保健研修センター助産師学校を卒業。病院・助産院勤務の後に1998年、松が丘助産院を開業。助産院ではお産だけでなく、産後ケアも担う。
2012年、一般社団法人ドゥーラ協会を設立。幸せで自然なお産のために妊娠中から育児までの一貫したケア・サポートを行っている。
著書に『世界一簡単な赤ちゃんごはん 大人ごはんを食卓で、つぶす、刻むだけであげられる』(主婦と生活社、2014年)、『妊娠・授乳中に食べたい和食 赤ちゃんが元気に育つ』(家の光協会、2016年)などがある。

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