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「ほめて伸ばす」は間違い?!アドラー式「勇気づける」子育て法子ども・家族について

取材:2015年12月

著者インタビュー画像 出産を経て、新たに「親」という役割を担うようになったとき、子どもとどんな関係を築けばよいか不安や悩みを抱える方は大勢います。アドラー心理学をベースにした、「より良い親を育てる」ための、実践的な子育てプログラムを広めている熊野さんに「ほめない、叱らないで、勇気づける」これからの時代の子育て法について伺いました。
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ワーキングマザーを輝かせる「アドラー心理学」

著者インタビュー画像 みなさんは「アドラー心理学」って、聞いたことがありますか?心理学と言うと日本ではフロイトやユングの名前ばかり知られていますが、同時代に生きたアドラーも、彼らと肩を並べるほどの世界的な心理学者。近年、アドラー心理学に関する書籍がベストセラーになったことで日本でもその存在が広く知られるようになりました。 実は、この考え方はワーキングマザーの心理的コンプレックスを取りのぞいたり、良い親子関係を築いたりする上で、非常に便利な考え方です。その特徴は、人が幸せになるために自分や他者を「勇気づける」ことの大切さを説いている点。そこには、ありのままの自分を認めようと言う考え方が根底にあります。

大切なのは「ありのままの自分を受け入れる」こと

著者インタビュー画像 最近、「自分に完璧を求めるあまり、パンクしてしまいそう」と悩むワーキングマザーが多いようです。100点満点の母、100点満点の妻、100点満点の社会人…。そんなに何でも自分に求めていたら、パンクしてしまうのは当然です。
ワーキングマザーに多い心理的コンプレックスや心理的負担は大きく3つ。自分と他人とを見比べてしまう「他者比較」。周りの人から認められたいと願う「承認欲求」。子どものため、夫のために、こんなにしてあげているのに!と自分の人生を犠牲にしていると感じる「自己犠牲」。
これらのコンプレックスや負担感に共通するのが「他者視点」です。他者の目ばかり気にする人生は、自分が主役でないため、幸せを感じられません。そして、こうしたコンプレックスや負担感を感じるのは、「自己受容」できていないことに起因しています。大切なのは不完全な自分を認めること。ありのままの自分でいいんだと思えることで、実は自身のコンプレックスを乗り越えられるだけでなく、同じように不完全なパートナーや、成長途中にある子どもについても許せるようになります。

コンプレックスから卒業させる「勇気づけの暗示」

著者インタビュー画像 では、コンプレックスから卒業し、自分自身を受け入れるにはどうすればよいのでしょう。コンプレックスを抱える人の多くは、知らず知らずのうちに「どうせ、私なんて…」と自己否定の暗示をかけています。それが、「勇気をくじく暗示」。こうした暗示をかけていると、次第に「自分がダメだった理由」を無意識のうちに探すようになります。そんなのバカらしいですよね。
「自分なんて…」という自分の声が聞こえてきたら、「きっとよくなる」「いつかうまくいく」と「勇気づけの暗示」を自分にかけるクセをつけることから始めるといいですよ。自己否定してしまうこと、うまくいかない自分にがっかりすることは、きっと誰にでもあると思います。でも、どんな失敗をしても、たいていのことは取り戻せます。死ぬわけじゃない。そんなときは「ジャマイカ人の教え」を!「じゃ、まーいーか」と口に出してみる。たったそれだけで、前向きになれると思いますよ。

親子コミュニケーションで大切な「相互尊敬」と「相互信頼」

次に子育てに焦点を当てて考えてみましょう。ここでキーワードとなるのが「相互尊敬」と「相互信頼」です。本来、子育てとは、子どもの自立を親が支援すること。そこで重要なのが、子どもを自分と対等の存在として認め、信頼することです。
以前、私がカウンセリングした方で、子どもが勉強をしてくれないと悩むお母さんがいました。お子さんは小学3年生。これまでは本を読むのも勉強も好きだったのに、ぱたりと勉強をしなくなってしまった…。勉強しないことをお母さんが叱って、子どもはそれに反発する。悪循環です。
この問題の本質はどこにあるのか?それは一言で言うと「子どもへの信頼の欠如」です。子どもが自分の課題を自分で克服できるとお母さんが信頼していない。「子どもが勉強しないから私が叱らないと!」という考えの根本にあるのは「子どもは自分よりも劣る存在だから、私がケアしないと…」という考え方です。

親からの信頼を感じれば子どもの行動は変わる

著者インタビュー画像 実は、そのお母さんはとても母性が強い方でした。母性の本質は「保護」。お母さんは良かれと思って子どもを守ろうとするのですが、その気持ちが強すぎて、どんどん子どものすることに手出し、口出ししてしまう。その過保護が子どもの自立を妨げ、子どもを追い詰めてしまうのです。
「勉強しなきゃダメでしょ!」「こんな成績とって!」という言葉が、子どものやる気や自信をくじいていた。カウンセリングを通してそのことに気づいたお母さんは、子どもを信じて見守ることに決めました。「子ども扱いしてごめんね。できないことがあったら、声をかけてね」と子どもに直接伝えたり、「信じているよ」というお母さんの気持ちを手紙に書いたりしたところ、とたんに子どもはメキメキと自ら勉強するようになりました。

良い親子関係を築くためには「上下関係」より「横の関係」

著者インタビュー画像4 私たちは、親と子の関係は上下関係だと思ってしまいがちです。もっと強い言葉を使うなら、それは「支配と依存」の関係。ですが、そんな関係性のままでは、いつまでたっても子どもは親から自立できません。親子関係の中で必要なのは、相互に信頼しあう横の関係です。
親は性別に関わらず子どもが生まれた瞬間は「母性」=「保護」が意識の中心となります。子どもがだんだん成長し、1歳から2歳になり、嫌なものを嫌だと意思表示するようになったら、徐々に「父性」=「分離(信じて見守る)」を意識しなくてはいけない。子どもの自立を望むのなら、親が子どもを一人の小さな紳士・淑女として、対等に扱う必要があるのです。

子どもを信頼するためには親の「自己受容」が不可欠

著者インタビュー画像4 ワーキングマザーの中には、これまで親の期待に応え、企業の中で社会的期待にも応えてきた方が多くいらっしゃいます。そのため、子どもに対しての期待値もものすごく高い場合があります。幼児教育は…習い事は…小学校は…とあれもこれも子どもに期待して、押しつけてしまいがち。
大切なのは子どもに「ありのままのあなたでいいのよ」と伝えることです。まだまだ成長段階にある子どもの失敗を叱るのでなく、「きっとうまくできるようになる」と信頼するのです。そうできるようになるには、まず親が自己受容を行い、不完全な自分を認められるようにならなくてはなりません。自分を許せない人は誰かを許すこともできないからです。自分を信頼できて、初めて、子どもを信頼することができるのです。

重要なのは子どもを「勇気づける」こと

子どもの教育においては、「ほめて伸ばすことが重要」とよく聞きませんか?でも、アドラー心理学では「ほめない、叱らないで、勇気づける」と伝えています。「ほめない」とは、つまり、「結果に注目しない」ということ。良い結果が出たら、「偉いね」ではなくて、子どもの気持ちに共感してあげるのです。子どもに「今、どんな気持ち?」と聞いてみたり、「嬉しそうだね。ママも嬉しいよ」と伝えてあげる。これが「勇気づけ」です。そうすると子どもはほめられたときよりもずっと目を輝かせます。
実は、結果ばかり見て子どもをほめていると、次第に子どもは自信を無くしてしまうんです。「成功するとほめられる」とは、裏を返せば「失敗したらほめられない」ということ。そのことが頭の中に刷り込まれてしまうと、次第に子どもは失敗するかもしれないものごとには挑戦しなくなってしまいます。「ほめ」と「叱り」の子育ては、子どもの可能性を狭めてしまうのです。子どもが挑戦できるのは、「失敗しても大丈夫!また挑戦すればいい」と思えるから。そのために必要なのは、「親が無条件で自分を信じてくれている」と子どもが感じられることなのです。

子育てを通して親は自らを成長させていく

著者インタビュー画像4 ペアレンティング講座のキーコンセプトは「父母が学べば子どもは伸びる」。子どもを育てるには、子どもの英才教育を考えるよりも、親と子どもとの関わり方を学ぶことの方がずっと重要だと思います。まずは親が「子育て」とは何かを勉強すべきなのです。
また、親と子どもの人間関係を考えるうえで重要な、「相互信頼」「相互尊敬」の考え方は、実はそのまま職場での「部下の育て方」にも応用できるメソッド。子育てを学び、そこから自分自身を成長させ、「育児」を「育自」とすることで、きっと仕事というフィールドでもより活躍できるはずです。ぜひ「子育て」を自らの成長のきっかけにしてください。

※記事内容およびプロフィールは取材当時のものです。

著者プロフィール

株式会社子育て支援 代表取締役

熊野 英一

アドラー心理学に基づく「相互尊敬」「相互信頼」のコミュニケーションを伝える <親と上司の勇気づけ>プロフェッショナル。日本アドラー心理学会正会員。
フランス・パリ生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。 メルセデス・ベンツ日本にて人事部門に勤務後、米国 Indiana University Kelley School of Businessに留学(MBA/経営学修士)。 製薬企業イーライ・リリー米国本社及び日本法人を経て、保育サービスの株式会社コティに統括部長として入社。 2007年、株式会社子育て支援を創業、代表取締役に就任。 2012年、日本初の本格的ペアレンティング・サロン「bon voyage有栖川」をオープン。
「アドラー心理学に基づく部下の自立を促すイクボス養成講座」「ほめない・叱らない!アドラー式勇気づけ子育て講座」等のテーマで講師を務める。三越伊勢丹グループ、 ソフトバンク、ドイツ証券、国立研究機関、大手製薬企業、日本能率協会マネジメントセンター等で管理職研修や人材育成研修に多数登壇。
連載コラム:「日経DUAL」「朝日おとうさん新聞」など。
著書:『アドラー・子育て 親育てシリーズ 第1巻 育自の教科書 〜父母が学べば、子どもは伸びる〜』 (2016年春刊行予定)

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