トップ読みもの女性の社会進出と男性の意識変化を背景に「イクメン」が増加

女性の社会進出と男性の意識変化を背景に「イクメン」が増加子ども・家族について

若い世代を中心に、「イクメン」と呼ばれる育児に積極的な男性が増えています。イクメンという言葉や概念は日本社会に浸透してきましたが、現状はまだまだ発展途上。元祖「イクメン」であり、部下が仕事と育児の両立しやすい労働環境づくりに尽力してきた「イクボス」上司でもある川島さんに、男性が仕事と育児を両立するメリットや必要な発想の転換法などアドバイスをいただきました。
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女性の社会進出と男性の意識変化を背景に「イクメン」が増加
著者インタビュー画像 日本社会は育児に積極的な男性「イクメン」を支援する動きを見せています。2010年、厚労省がイクメンプロジェクトを発足。同年、改正育児・介護休業法が施行され、男性も育児休暇を取得しやすくなりました。流行語大賞に「イクメン」がノミネートされブームとなったことで、男性が育児することが肯定的にとらえられるきっかけにもなりました。今でも「イクメン」をテーマにした講座やイベントが行政・企業で多数行われ、社会の新しい流れとして定着しつつあります。
「イクメン」が増加している背景には、働く女性の増加があります。1997年に共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回り、以後、共働き世帯数は増加し続けています(※1)。男性が毎晩遅くまで残業と仕事のつきあいで帰宅せず、家庭や地域のことを女性に任せきりにしていたのは、1950年代から1980年代までの一時期のことだったのです。現在は夫婦で力を合わせて仕事と育児と家事を両立していくことが求められる世の中になっていると言えるでしょう。
男性の意識の変化も「イクメン」増加の背景にあります。たとえば「一家の大黒柱」という重圧に耐えきれなくなっている男性は少なくありません。長時間労働を強いられても、以前はその対価として年功序列、終身雇用が守られていました。今はどんなに身を粉にして働いても、経営危機、買収、吸収合併など何があるかわかりません。想定外のことが起きる社会で孤軍奮闘するよりも、パートナーと2人でリスクシェアするほうが心強いですし、現実的です。
また同時に、仕事だけの人生には満足できないと、職場以外の居場所を求めて地域活動、ボランティア、副業などに乗り出す男性が増えています。育児は女性だけがやるものではない、仕事だけが全てではないという考えは、30代半ばより若い世代ではごく当たり前のこととして浸透していると思います。
「イクメン」の数を増やすために必要なのは意識改革
「イクメンでありたい」と思う男性は増えていますが、実際の「イクメン」の数はそれに比べてまだ少ないのが実態です。その理由は大きく2つ。1つは職場の上司の意識が古いままで、男性が育児をしやすい環境になっていないこと。「イクメン」や「イクボス」(※2)という言葉に反発する年配の男性には「仕事そっちのけで育児なんてけしからん」と思っている人もいるようです。若くても「男は稼いでなんぼ。女に頼るなんて情けない」と思っている男性も。
もう1つは、男性の意識。実は「イクメンでありたい」と思いながらも、どこかで「仕事のほうが楽だ」と育児から逃げているケースがあるようなのです。たしかに育児は大変です。思い通りにならないし、誰もほめてくれません。会社で仕事をしているほうが評価や成果を得られやすく、やりがいを感じやすい面もあるでしょう。ですが、育児を敬遠し、本気で取り組もうとしない男性が減らなければ「イクメン」は増えないでしょう。
「イクメン」への抵抗勢力はまだまだ根強くありますし、育児に対する苦手意識をぬぐいきれず立ち往生している男性も多数いるのが、今の日本の現状なのです。
「イクメン」としての成長は職業人としての成長に直結
著者インタビュー画像 仕事と育児の両立を阻む壁の一つに、長時間労働があります。短時間で生産的に働くことが「イクメン」への第一歩。私の場合、「資料作成」「会議」「メール」という時間泥棒の退治、上司からの指示待ちではなく能動的に動く、やらないことをドンドン決める、得意分野以外は出来る限りアウトソース、To-Doを整理整頓、9回裏二死満塁の気持ちで仕事をするなどで、仕事の成果は同じで労働時間は60%になりました。上司が「イクボス」でなくても、自分次第で、仕事と私生活の両立はある程度可能となります。また短時間で確実に成果を出せるようになることは、仕事人としても大きな成長になるはずです。このあたりは私の著書でも詳しく紹介しています。
もちろん、退社時間を早めることで残っている人に負担をかける可能性もあるので、普段から職場の仲間には感謝の気持ちを伝える配慮も必要ですね。
私は、育児、さらには家事、PTAなどの地域活動に全力で関わることで、人脈や視野が広がる、組織運営力が高まるなど、仕事のスキルがものすごくあがったと実感しています。そして自分の居場所が職場や飲み屋だけでなく、家庭や地域活動など、何カ所もあるほうが絶対良いと実感しています。職場にしか居場所がなくて、私生活がゼロ。家族とは不和になり、35年ローンで買った家の近所には知り合いが1人もいない…。それではむなしすぎる。居場所が増えるほど、人生は豊かになり、素直に生きがいを感じられるようになり、生き生きと生きられるのだと思います。
共働きしながら夫婦協同で育児に取り組むことは、リスクヘッジでもあります。「自分が倒れたら?」「会社が倒産したら?」…。仕事や職場に不測の事態があっても、パートナーが働いていれば家計破たんは回避できますし、職場以外の居場所があれば仲間に励まされ、助けられるかもしれません。また男性には強調しておきたいのですが、家族のために会社に尽くして働いても、定年後に家庭で居場所がなくて熟年離婚してしまうケースは増えています。経済的に自立した妻は、家庭を顧みない夫を捨てるかも。仕事にも家庭にも両方しっかり向き合う「イクメン」はこれからの時代、男性のあるべき姿だと思います。
互いの得意分野を発揮し、夫婦で家事育児のタスク分担
著者インタビュー画像 ここで少し、私の経験を振り返ってみましょう。息子が生まれたとき、私は海外に単身赴任中でした。当時私の勤務先に育休制度はなく、妻の育休中には離れて暮らさざるを得ませんでした。私が帰国し、妻がフルタイムで復職すると決めたとき、私の中に自然と「2人で育児をやっていこう」という考えが芽生えました。朝の保育園のお見送りと朝食づくりは私の担当。保育園で父親を見かけることなどほとんどない時代で、とても珍しかったと思います。
息子が中学生になったら毎朝5時起きでお弁当作りを担当。高校卒業までの6年間続けました。結婚当初、料理はまったくできなかったのですが、お弁当作りで急激にスキルアップしました。実際、毎朝の弁当作りは大変でしたが、お弁当箱が空っぽになって戻ってくるのがやっぱり嬉しくて。息子が大学生になってお弁当から解放された今はホッとする反面、寂しさもあります。他にも息子の小・中学校時代にはPTA会長を何年も務め、自分の育児の楽しみとして、息子の所属する少年野球のコーチもやりました。
わが家ではお互いが言葉にしなくとも、「得意なことをやる」「好きなことをやる」という基準でなんとなく家事と育児の分担が決まっていきました。妻は「あなたは3割ぐらいしかやってない」といいますが、自分では5割ぐらいやってきたつもり。間をとって4割負担というのが真相だと思います(笑)。もし今、パートナーとの分担に不平等感があるなら、お互いが納得できるように、話し合うことも必要でしょう。
両立成功の鍵は優先順位付けの明確化にアリ
著者インタビュー画像 育児は仕事と同様に、優先順位をつけることが大切です。「家族をやっていくうえでコアになることは何か?」「外せないことは何か?」明確な優先順位付けがあれば、日々の迷いや悩みが減ります。私たち夫婦が価値観のコアとしたのは「息子が安心・安全に過ごすこと」と「食事はなるべく親が作り、家族みんなで食卓を囲むこと」でした。
たとえば、息子の安全のためにも、息子が寂しい思いをしないためにもシッターさんの存在は欠かせないと判断し、惜しまずお金をかけました。息子の保育園時代はもちろん、小学校1~3年までは学童の送迎をお願いしていました。シッターさんは私たち家族にとっては大切な存在。1人の方にお任せするのが理想でしたが、なかなかそうもいかず、実際は2〜3人の方にお願いしていました。必ず事前にお会いして目を見て話し、子ども好きで息子を可愛がってくれそうな、信頼できる人柄の方にお願いすることを徹底しました。
そして毎日の食事は、なるべく親が作ることを心がけました。ときには市販のおかずを1~2品買うこともありましたし、疲れたときやお祝いのときにはあえて外食することも。でも基本的には手料理を家族で一緒に食事をすることが家族の絆を保つ上でも子どもの成長のためにも大切だと考えたのです。
パートナーを頭ごなしに叱るのは絶対にNG
著者インタビュー画像 育児はお互い初めてでも、家事については妻が上司で夫が部下、という関係になる家庭が多いと思います。これを読んでいる女性の皆さんには、パートナーに対しては部下を育てるような大らかな気持ちが大切だと言いたいですね。私の経験上、部下の育成と夫のイクメン化にはかなり共通するところがあります。たとえば誰だって「〇〇しなさい」と頭ごなしに命令されるのはイヤですよね。そして「〇〇さんはあんなにできる。それに比べてあなたは……」と比べられるのもイヤでしょう。自分が嫌なことは相手にもしてはいけません。
そして男性はプライドが高い生き物ですので、ほめながら伸ばすこと。頭ごなしに叱るとか、否定する言動は絶対NG。すっかりやる気をなくしてしまいます。私が講演で「洗濯物の干し方やたたみ方について奥さんに叱られたことがある人はいますか?」と聞いたら、会場にいた男性のほとんどが手を挙げたことも(笑)。男性は衣類の管理が女性よりルーズかもしれませんが、そこはグッと我慢。やる気の芽をつぶさないようにお願いしたいですね。自分流でやってみて、あれこれ試行錯誤し、できるとわかると面白くなって、どんどん領域拡大していくのが男性の習性。そうしたところも理解して上手に任せていくことが、共働きで両立生活を実現していく上では必要だと思います。
理想の大人像を子どもに見せる気概が必要
著者インタビュー画像 私は息子が中学3年生のときにPTA会長として卒業式で挨拶をしました。全員に向かって語りかけながら、心の中では息子に向かって話しかけていました。「自分の好きなことをやろう。親が何と言おうが関係ない。自分が好きなことと得意なことを掛け算しよう。そうすれば生きる道が見えてくる」と。息子には自分自身がそうしてきたように、ワーカホリックにならず、仕事もプライベートも充実できる人生を送ってほしい、と日頃から伝えています。息子は野球をしながら勉強も手を抜かず続けてくれていますし、料理もよくします。育児の答えはまだでていませんが、本当に子どもは親の背中を見て育つと思います。
親が仕事中心の生活をしていると、子どもに喜怒哀楽を見せる場面がなかなかありません。しかしPTA、少年野球のコーチ、町内会の役員なんかをやっていると、人に何かを頼んだり、謝ったり、感謝したりされたり、楽しんだりくやしがったりする姿を間近で見せることができるのです。子どもは親のその姿を見て、生きることを肯定的にとらえられるようになるのだと思います。
仕事に邁進する男性も、まずは週1回でも定時に退社し、家族と夕飯を食べたり、子どもと遊んだりする生活を目指すことから始めてみることをおすすめしたいですね。自分が「イクメン」になる姿なんて想像できないという男性もいるかもしれません。でも人生は一度きり。育児も期間限定であっという間に終わってしまいます。後悔のないように、ぜひパートナーとふたりで力をあわせて育児と仕事の両立を積極的に進めてほしいですね。

2016年9月取材

<参考リンク>

(※1)独立行政法人 労働政策研究・研修機構 統計情報

「専業主婦世帯と共働き世帯」より
http://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html

(※2)「イクボス」とは

部下の私生活を応援し、自らも仕事と私生活を両立させ、なおかつ組織の成果に責任感を持つ経営者や上司のこと。「イクメン」や育児中の女性ワーカーを支援するため、男性の育児休暇取得の推進はもちろん、短時間労働でも生産性の高い働き方を評価する人事制度などを積極的に採り入れ、仕事と育児を両立しやすい労働環境整備に努める。川島さんは自らが社長を務めた会社で働き方の改善を実施。結果、3年間で利益が8割増、時価総額が2倍、残業時間は1/4になるなど、社員満足度と業績の両方をアップさせた。

著者プロフィール

NPO法人ファザーリング・ジャパン 理事
NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表

川島高之

1964年神奈川県生まれ。慶應大学理工学部卒、三井物産株式会社に入社。2012年より系列上場会社である三井物産ロジスティクス・パートナーズ株式会社の代表取締役社長に就任。2016年退任し独立。一人の父親として、地元小・中学校のPTA会長、少年野球のコーチなども務める。NPO法人コヂカラ・ニッポン代表、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事を務め、ライフ、ワーク、ソーシャルの3つを融合させた生き方をテーマに各地で講演を行う。著書に『いつまでも会社があると思うなよ!』(PHP研究所、2015年刊)。『AERA』に「日本を突破する100人」として選出される。

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